地理学概説(担当:三木一彦) 今日のおすすめ              20・6・2現在
 
 
T.地理学とは
 
@A.ウエゲナー著,竹内 均訳(1990,原著1929):『大陸と海洋の起源』,講談社学術文庫,403p.
A松本 修(1996,初出1993):『全国アホ・バカ分布考 −はるかなる言葉の旅路−』,新潮文庫,582p.
 @は、大陸移動説の原典です。訳者による解説が適切で、地球科学概説としても読めます。TVディレクターによる異色の方言研究書であるAは、下手な研究書よりもしっかりとした本で、しかも読みやすく書かれています。学ぶことの面白さをいきいきと伝えてくれる快著だと思います。
 
 
U.地理学のキーワード
(1)環境
 
○水本邦彦(2003):『日本史リブレット52 草山の語る近世』,山川出版社,99p.
 江戸時代の人間と山の関わりを平易に説いた本です。この本を手始めとして、今日の環境問題を歴史的視点から問い直してみるのも面白いと思います。
 
 
(2)地域
 
@小林康夫・船曳建夫編(1994):『知の技法 −東京大学教養学部「基礎演習」テキスト−』,東京大学出版会,283p.
A吉本哲郎(2008):『地元学をはじめよう』,岩波ジュニア新書,213p.
 @は、発売当時ベストセラーとなった東京大学1年生向けのサブ=テキストで、さまざまな学問分野の見方・考え方が紹介されています。Aは、熊本県水俣市での実践を通して、地域へ向けるまなざしを「ないものねだり」から「あるもの探し」へ移していくことを呼びかけており、地理学や地域学習への示唆に富んだ一冊です。
 
 
(3)景観
 
○田村 明(2005):『まちづくりと景観』,岩波新書,231p.
 近年、日本で注目を集めるようになってきた都市の景観について、各地の具体例を紹介しながら論じた本です。外国の事例についても多くふれられており、この点に関する彼我の差を痛感させられます。
 
 
(4)立地
 
@寺本 潔・大西宏治(2004):『子どもの初航海 −遊び空間と探検行動の地理学−』,古今書院,164p.
A水無田気流(2015):『「居場所」のない男、「時間」がない女』,日本経済新聞社,274p.
 「地理」と「子供」というテーマに関しては、地理教育が取り上げられることが多かったのですが、近年、「子供の地理」という観点からの研究もみられます。@にように空間的な側面から生活者としての子供をとらえることは、地理や社会科の教育を考える上でも必要かつ有益な見方だと思います。Aは、「空間」と「時間」という視点から、現代日本人の生きづらさをとらえています。2020年にはちくま文庫で文庫化されました。
 
 
V.地図と地理学の歴史
(1)世界
 
○織田武雄(1974):『地図の歴史 −世界篇−』,講談社現代新書,222p.
 西洋と東洋における地図の変遷を、それぞれの地図が描かれた時代背景と関連させながらまとめた概説書です。古地図の図版も多く収められており、文章と合わせ、世界を表現しようと格闘してきた人間の長い歴史を跡づけることができます。姉妹編として『地図の歴史 −日本篇−』もあり、2018年には世界篇と日本篇の合本が講談社学術文庫から刊行されました。
 
○ジュール=ヴェルヌ著,鈴木啓二訳(2001,原著1873):『八十日間世界一周』,岩波文庫,466p.
 児童文学作品として、子供の頃に親しんだ人もいるかと思います。交通機関の発達によって時間距離が短くなった19世紀後期の世界がえがかれており、地理や歴史の知識をもった上で読み直してみると、また違った発見が得られると思います。
 
 
(2)日本
 
@吉村 昭(1987,初出1982):『間宮林蔵』,講談社文庫,461p.
A新田次郎(1981,初出1977):『劔岳 −点の記−』,文春文庫,407p.
 @は、綿密な考証をもとに、間宮海峡の発見者として知られる探検家の一生をえがいた伝記文学です。間宮林蔵が生きていた時代が、その周辺の人物とともに、生き生きと浮かび上がってきます。2009年の映画化によって注目を集めたAは、北アルプスという過酷な自然の中、地図作成に情熱を燃やした男たちの物語です。
 
 
W.地図の種類と用途
 
@ヤフー地図(https://map.yahoo.co.jp/maps?type=scroll
A地図マピオン(https://www.mapion.co.jp/
B地理ゼミと三木一彦のページ リンク集(http://www.koshigaya.bunkyo.ac.jp/miki31/link.html
 おなじみのグーグルマップ以外にも、サイト上ではさまざまな種類の地図が閲覧できます。@には前後1時間の雨雲の状況を見られる「雨雲レーダー」がついており、Aは紙の地図に近く、建物などの情報量が多いのが特徴です。Bにはその他さまざまな地図サイトへのリンクを張ってあります。
 
 
X.地形図の読図
 
○地理院地図(電子国土Web)(http://maps.gsi.go.jp/
 国土地理院によるweb地図で、実測に基づく日本全国の地形図や主題図を閲覧できます。何といっても日本全土のあらゆる地図の大本であり、自宅や旅先などをこれで確認してみるのも良いと思います。
 
 
○新垣紀子・野島久雄(2001):『方向オンチの科学 −迷いやすい人・迷いにくい人はどこが違う?−』,講談社ブルーバックス,238p.
 知らない場所に行って、道に迷ってしまった経験は多くの人がもっていると思います。この本では、方向音痴に関して心理学的な側面からアプローチが行なわれており、そこから脱出する方向についても示されています。
 
 
○堀 淳一編(1994):『日本の名随筆 別巻46 地図』,作品社,249p.
 地図についての随筆集で、永井荷風・太宰 治・寺田寅彦など有名な作家・学者のものも収められています。地図はながめているだけでも楽しいものですが、この本は、文学的な面からも地図に親しむことができることを教えてくれる一冊です。
 
 
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