【埼玉大学】歴史地理学(担当:三木一彦) 今日のおすすめ       18・6・29現在
 
T.フランスの概観
 
○今橋映子(2001,初出1993):『異都憧憬 日本人のパリ』,平凡社ライブラリー,607p.
 明治以降の日本は、さまざまな面でフランスからの影響をうけてきました。この本は、「花の都」とうたわれたパリに住み、それぞれの形で異文化と格闘した日本人たち(永井荷風・高村光太郎・島崎藤村・金子光晴ら)の姿を跡づけたものです。今の日本と西洋との関わりを考える際にも参考となる一冊だと思います。
 
 
U.ガリアの時代
 
○原 聖(2016,初出2007):『興亡の世界史 ケルトの水脈』,講談社学術文庫,387p.
 古代のヨーロッパに関しては、ギリシャ・ローマのことを詳しく学ぶ反面、北西ヨーロッパにいたケルト人たちの状況についてはあまり知られていません。本書では、ストーンヘンジに代表される巨石文化の時代から現在のケルト再生の動きまで、ケルト人を中心とした「もう一つの」ヨーロッパ史について概観することができます。
 
 
V.ローマの支配
 
○E.ギボン著,中野好夫ほか訳(1995〜96,原著1776〜88):『ローマ帝国衰亡史(全10巻)』,ちくま学芸文庫.
 五賢帝時代から東ローマ帝国滅亡まで、約1500年間におよぶ「ローマ帝国」の歴史、とりわけなぜ大帝国が滅びるに至ったのかをえがいた大作です。今の目からみれば、細かな事実誤認などもあるようですが、「歴史」が「物語」であるという骨太の面白さが多くの読者を引きつけてきました。
 
 
W.「フランス」の誕生
 
○有永弘人訳(1965):『ロランの歌』,岩波文庫,291p.
 ドイツの「ニーベルンゲンの歌」とならぶ中世叙事詩の代表作で、騎士道物語としてはイギリスの「アーサー王物語」と双璧をなします。シャルルマーニュ(カール大帝)のスペイン遠征に題をとって11世紀に成立したもので、当然ながら史実はかなり脚色されています。それだけにかえって、中世ヨーロッパ「騎士道」の理想を私たちに教えてくれるといえるでしょう。
 
 
X.中世
(1)農村
 
○ジョゼフ=ギース・フランシス=ギース著,青島淑子訳(2008,原著1990):『中世ヨーロッパの農村の生活』,講談社学術文庫,308p.
 中世におけるイングランドの一農村を中心にすえ、当時のヨーロッパの農村を活写した著作です。同じ筆者による姉妹編に『中世ヨーロッパの城の生活』・『中世ヨーロッパの都市の生活』・『大聖堂・製鉄・水車』などがあります。
 
 
(2)都市
 
○ケン=フォレット著,矢野浩三郎訳(1991,原著1989):『大聖堂 上・中・下』,新潮文庫.
 12世紀のイングランドを舞台に、大聖堂の建設と、それをめぐる人々をえがいた歴史小説です。中世ヨーロッパ社会、すなわち当時における王・貴族・宗教者・庶民などの関係についてイメージをつかむのに適した作品だと思います。なお、2005年にSB文庫から再刊されました。
 
 
Y.近世
(1)都市
 
@リュシアン=フェーヴル著,二宮 敬訳(1996,原著1925):『フランス・ルネサンスの文明 −人間と社会の四つのイメージ−』,ちくま学芸文庫,252p.
A渡辺一夫(1992,初出1971):『フランス・ルネサンスの人々』,岩波文庫,377p.
 特定の事件や人物に片寄ることなく、社会全体の歴史を明らかにしようとする20世紀フランスの歴史学を総称してアナール学派とよびますが、@はその創始者の一人である著者が、具体的な例をひきつつ、ルネサンス期フランスの特色をいきいきと物語っています。また、フランス文学者によるAは、激動期を生きた12人の生涯を、「それは人間であることと何の関係があるのか」という重い問いかけとともにたどっています。
 
 
(2)農村
 
○鯖田豊之(2007,初出1966):『肉食の思想 −ヨーロッパ精神の再発見−』,中公文庫,220p.
 ツアーはともかく、個人でヨーロッパへ旅行したときに私が一番困るのが「何を食べるか」という問題です。その根っこには、欧米が肉食社会であるという事実が横たわっています。本書は、食生活という日常からヨーロッパや日本の社会を俎上に載せた好著です。
 
 
Z.19世紀
 
○藤原辰史(2017):『トラクターの世界史 −人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち−』,中公新書,270p.
 農業機械の登場は、単に農業の方法や農村社会を変えたにとどまらず、近現代の歴史の流れや社会全体の変革にさまざまな影響を及ぼしてきたと著者は主張します。日本も含め、全世界的な視野からトラクターを通してみえる近現代史をえがく意欲作です。
 
 
[.中央と地方
 
@田中克彦(1981):『ことばと国家』,岩波新書,218p.
A小林 標(2006):『ラテン語の世界 −ローマが残した無限の遺産−』,中公新書,288p.
 @は、言語と政治の関係に鋭く切り込んだ好著で、言語を社会的に考えていく上では必読の文献だと思います。ヨーロッパ諸言語の源流ともいえるラテン語を扱ったAは、いろいろな雑学が身につくという意味でも興味深く読める一冊です。
 
 
\.パリの歴史
 
○ジョージ=オーウェル著,小野寺 健訳(1989,原著1933):『パリ・ロンドン放浪記』,岩波文庫,294p.
 『1984年』などで知られるオーウェルの処女作品です。世界恐慌が起こった1929年、ホテルの皿洗いなどで糊口をしのいだパリでの著者とその周囲の人々の暮らしぶりを、生き生きとしたルポルタージュとしてえがいています。これもまた、「パリ」の一つの姿だと思います。
 
 
].植民地からみたフランス
 
○マリオ=パルガス‐リョサ著,田村さと子訳(2008,原著2003):『池澤夏樹=個人編集 世界文学全集1-2 楽園への道』,河出書房新社,507p.
 ヨーロッパ文明に背を向けて晩年をタヒチで過ごしたポール=ゴーギャンと、その祖母で先駆的な社会主義活動家であったフローラ=トリスタンの生涯を重ね合わせながらえがいた骨太の歴史小説です。資本主義や帝国主義が圧倒的な力を有していた19世紀という時代に反逆し、「楽園」を求めて闘った二人の人生は、現代の私たちにも重いメッセージを投げかけているように思います。河出文庫版も刊行されました。
 
 
◎フランスの芸術
(1)美術
 
○池上英洋(2012):『西洋美術史入門』,ちくまプリマー新書,190p.
 初学者向けの美術史導入書として書かれた本で、西洋の美術の「読み方」を、その社会との関わりを含めて解説しています。巻末におかれた美術史の概観も要領よくまとめられていると思います。
 
 
(2)音楽
 
○岡田暁生(2005):『西洋音楽史 −「クラシック」の黄昏−』,中公新書,243p.
 壮大なクラシック音楽の歴史をコンパクトにまとめた優れものの概説書です。中世から20世紀までを幅広く、かつ手際よく扱っています。図版も多数おさめられており、読解の手助けとなります。教養としてクラシック音楽にふれたい人におすすめです。
 
 
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