自然地理学(担当:三木一彦) 今日のおすすめ              20・10・6現在
 
 
T.自然地理学と環境問題
 
○レイチェル=カーソン著,青樹簗一訳(1974,原著1962):『沈黙の春』,新潮文庫,358p.
 環境問題に対する最初の警鐘となったという点で、歴史的意義をもつ一書です。そして、その警鐘は、今なお新鮮さを失っていません。環境問題を考える上で、必読の一冊といえるでしょう。
 
 
U.地形
 
○杉谷 隆・平井幸弘・松本 淳(2005):『風景のなかの自然地理 改訂版』,古今書院,140p.
 初学者向け(文系向けといってもよいでしょう)の「自然地理学」教科書として編まれたもので、火山・山と川・森林など、目に見える風景によって各章が構成されています。図版や写真も多く、理解の助けになります。
 
○鎌田浩毅(2002):『火山はすごい −日本列島の自然学−』,PHP新書,240p.
 日本の地形を語る上で不可欠な火山について、5つの火山をもとに分かりやすく述べた本です。題名は一見変わっていますが、火山やそれに関わる学問の面白さがひしひしと伝わってくる啓発書です。
 
○杵島正洋・松本直記・左巻健男編(2006):『新しい高校地学の教科書 −現代人のための高校理科−』,講談社ブルーバックス,365p.
 自然地理学はその内容から、高校の理科、とりわけ地学の教科内容と深い関わりをもっています。
この本は、高校地学の内容を、一般向けの教養書として分かりやすくまとめたものです。なお、同様のシリーズとして、生物・化学・物理もそれぞれ編まれています。
 
 
V.気候
 
○武田喬男(2019,初出2005):『雨の科学』,講談社学術文庫,237p.
 「雨」に関する研究の第一人者による一般向け書き下ろしです。雨粒などミクロスケールでの雨の特徴から、地球規模の気候における雨まで、視野を徐々に広げる形で記述されています。身近なものから出発する科学的探求の面白さにふれることができると思います。
 
○土屋愛寿(2001):『世界の気象 総めぐり』,岩波ジュニア新書,186p.
 世界各国への旅行をもとに、各地での気候と人間生活との関係を述べた一冊です。世界の全独立国を回ったという著者の手になるだけに、日本人が訪れることの少ない土地(例えば、チベット・エリトリア・グリーンランド)の記述もあり、地球上の条件が多様であることを再確認させられます。
 
○木村龍治監修(2004):『気象・天気図の読み方・楽しみ方』,成美堂出版,255p.
 オールカラーで、ふだん目にする天気図や衛星写真をどのように読めばいいのかを分かりやすく解説した本です。四季折々の話題が幅広く取り上げられており、日本の気候をより身近に感じられるよう、さまざまな工夫がほどこされています。
 
○宇沢弘文(1995):『地球温暖化を考える』,岩波新書,212p.
 地球温暖化について、経済学者が書いた本です。著者が「はしがき」で書いているように、地球温暖化と20世紀文明との関わりについて、小学生でもわかるようにと平易に述べられています。
 
 
W.植生
 
○稲垣栄洋(2016):『植物はなぜ動かないのか −弱くて強い植物のはなし−』,ちくまプリマー新書,197p.
 動物との比較などから、植物がどのような戦略をもって自然界を生き抜いているのかを平易に説明しています。同じ著者による『雑草はなぜそこに生えているのか −弱さからの戦略−』(同新書)との併読をおすすめします。
 
○山田 勇(2006):『世界森林報告』,岩波新書,210p.
 周知の通り、今日、世界の森林に関しては、熱帯林の破壊などさまざまな問題が山積しています。この本では、東南アジア・南北アメリカ・ヨーロッパ・アフリカなど各地の森林の現状が報告され、それぞれの生態系における森林の役割について解説されています。
 
 
X.土壌
 
○藤井一至(2015):『大地の五億年 −せめぎあう土と生き物たち−』,ヤマケイ新書,229p.
 人間を含む生物と土との関わり合いが、5億年という長いタイムスパンの中でえがかれています。あらゆる動植物にとっての土の大切さが、図版や写真も使いつつ、分かりやすく説明されています。
 
 
Y.水文
 
○保坂直紀(2003):『謎解き・海洋と大気の物理 −地球規模でおきる「流れ」のしくみ−』,講談社ブルーバックス,282p.
 海流と気流を糸口に、海や大気のしくみについて分かりやすく解説された入門書です。地球にはたらくさまざまな力と、その海や気候への影響について知ることができます。
 
○加藤 真(1999):『日本の渚 −失われゆく海辺の自然−』,岩波新書,220p.
 河口・干潟・砂浜・珊瑚礁といった日本の海辺の現状を訪ね歩き、その保護をよびかけた一冊です。「水辺」が「水際」に変わっていく過程で、いかに多くの自然が失われていったかを述べています。環境保護運動もまずは地道な現状認識から、と思わされます。
 
 
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