地理学[共通教養](担当:三木一彦) 今日のおすすめ         16・11・30現在
 
 
T.ヨーロッパとは
 
@エドワード=W=サイード著,板垣雄三・杉田英明監修,今沢紀子訳(1993,原著1978):『オリエンタリズム 上・下』,平凡社ライブラリー.
Aエーリッヒ=ショイルマン著,岡崎照男訳(2009,原著1920):『パパラギ −はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集−』,ソフトバンク文庫,178p.
 @は、西洋が東洋をいかに色眼鏡でもって見ていたかを教えてくれる「異文化」研究の基本図書です。と同時に、日本人には、その色眼鏡が知らず知らずのうちに自分自身にもそなわっていないかという反省を迫る書でもあります。サモアの酋長によるパパラギ(=白人)文明批判であるAは、現代社会に対する痛烈な警告に満ちており、近代文明の負の部分について考えさせられます。
 
 
U.自然環境
 
○カレル=チャペック著,小松太郎訳(1975,原著1929):『園芸家12カ月』,中公文庫,213p.
 チェコの国民的作家チャペックが、庭づくりにいそしむ園芸家の一年をユーモアをまじえながらえがいた作品です。兄ヨゼフの挿絵と合わせて文章を楽しみつつ、自然と人間のつきあい方について考えさせられる読み物です。
 
 
V.宗教
 
@橋爪大三郎・大澤真幸(2011):『ふしぎなキリスト教』,講談社現代新書,349p.
Aケン=フォレット著,矢野浩三郎訳(1991,原著1989):『大聖堂 上・中・下』,新潮文庫.
 2011年の新書大賞に選ばれた@は、近代西洋の背骨ともいえるキリスト教の性格をつかむことができる対談本です。Aは、12世紀のイングランドを舞台に、大聖堂の建設と、それをめぐる人々をえがいた歴史小説です。中世ヨーロッパ社会についてのイメージをつかむのに適した作品だと思います。2005年にソフトバンク文庫から再刊され、その続編も刊行されました。
 
 
W.言語
 
@田中克彦(1981):『ことばと国家』,岩波新書,218p.
A小林 標(2006):『ラテン語の世界 −ローマが残した無限の遺産−』,中公新書,288p.
 @は、言語と政治の関係に鋭く切り込んだ好著で、言語を社会的に考えていく上では必読の文献だと思います。ヨーロッパ諸言語の源流ともいえるラテン語を扱ったAは、いろいろな雑学が身につくという意味でも興味深く読める一冊です。
 
 
X.人種
 
○ブライアン=サイクス著,大野晶子訳(2001,原著2001):『イヴと七人の娘たち』,ソニー・マガジンズ,358p.
 近年、遺伝子研究の進歩によって、従来の「人種」概念が問い直されつつあります。本書は、母系で受け継がれるミトコンドリアDNAの祖先をたぐっていくという科学読み物で、ヴィレッジブックスから文庫版も出されています。また、同じ著者が父系のDNAに焦点をあてたものが『アダムの呪い』です。
 
 
Y.人口
 
○内藤正典(2004):『ヨーロッパとイスラーム −共生は可能か−』,岩波新書,207p.
 イスラム教徒がキリスト教の欧米諸国に住み着くことで、さまざまな軋轢が生じていることは、日本でも時折報道されています。この本は、ドイツ・オランダ・フランスなどでの現地調査に基づき、地理学の視点から異文化共生の道を探った一冊です。
 
 
Z.政治
 
○岩間 徹(1990,初出1969):『世界の歴史16 ヨーロッパの栄光』,河出文庫,403p.
 現代ヨーロッパの骨格を形作った19世紀のヨーロッパ史について、イギリス・フランス・ドイツ・イタリアなど各国にバランス良く目配りされた通史です。「栄光」の裏側にも言及されており、今日の世界を考える上でも大いに参考になると思います。
 
 
[.都市
 
増田四郎(1994,初出1978):『都市』,ちくま学芸文庫,228p.
 一口に「都市」といっても、日本とヨーロッパではその成り立ちがかなり違います。本書は、古代から近代に至るヨーロッパの都市史を縦軸としてその歴史的役割を述べつつ、日本を主とする東洋の都市との比較もなされており、それぞれの風土に根ざした都市のあり方が分かりやすく叙述されています。
 
 
\.第二次産業
 
○川北 稔(2010):『イギリス近代史講義』,講談社現代新書,268p.
 世界で最初に産業革命を経験したイギリスの近代史について、世界史的な視点から平易に説かれた一冊です。日本経済の現状なども頭におきつつ読み進めれば、歴史を学ぶ醍醐味が味わえると思います。
 
 
].第三次産業
 
○アガサ=クリスチィ著,長沼弘毅訳(1959,原著1934):『オリエント急行の殺人』,創元推理文庫,324p.
 名探偵エルキュール=ポワロが活躍する推理小説です。イスタンブールとカレーを結ぶオリエント急行に題をとり、列車という狭い空間の中に当時のヨーロッパ社会の縮図をえがき出したことが、名作たるゆえんのように思われます。新潮文庫やハヤカワ文庫でも入手可能です。
 
 
]T.第一次産業
 
○池上俊一(2011):『パスタでたどるイタリア史』,岩波ジュニア新書,228p.
 パスタという食べ物を糸口に、イタリアの歴史や文化をひもといた興味深い一冊です。歴史の中で、外からの影響をうけつつ、パスタがどのような変化をとげてきたのかが分かりやすく説明されています。同じ著者による続刊に『お菓子でたどるフランス史』があります。
 
 
]U.農村集落
 
○ジョゼフ=ギース・フランシス=ギース著,青島淑子訳(2008,原著1990):『中世ヨーロッパの農村の生活』,講談社学術文庫,308p.
 中世におけるイングランドの一農村を中心にすえ、当時のヨーロッパの農村を活写した著作です。同じ著者による姉妹編に『中世ヨーロッパの城の生活』・『中世ヨーロッパの都市の生活』・『大聖堂・製鉄・水車』などがあります。
 
 
]V.まとめ
 
○鯖田豊之(2007,初出1966):『肉食の思想 −ヨーロッパ精神の再発見−』,中公文庫,220p.
 ツアーはともかく、個人でヨーロッパへ旅行したときに私が一番困るのが「何を食べるか」という問題です。その根っこには、欧米が肉食社会であるという事実が横たわっています。本書は、食生活という日常からヨーロッパや日本の社会を俎上に載せた好著です。
 
 
[番外]
 
○「THE 世界遺産」(TBS系テレビ,毎週日曜日18:00〜18:30)
 本授業でお見せしたビデオのもととなっている番組です。現在、テレビでは数多くの旅番組が放映されていますが、その中で淡々としたナレーションだけで進行するこの番組は、かえってその遺産の価値を見事に伝えてくれているような気がします。
 
 
 
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